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DDoS攻撃とは|31.4Tbpsの新記録とCloudflareが見た2026年の脅威地図

2026-09-04ビジネス

#DDoS攻撃#Cloudflare#ボットネット#サイバー攻撃#ネットワークセキュリティ

「たった35秒」——2025年12月、史上最大規模となる31.4TbpsのDDoS攻撃が観測されましたが、攻撃が続いたのはわずか35秒でした。人間の担当者がアラートに気づいた頃には、もう終わっている。それでも被害は残ります。DDoS攻撃は今、規模・頻度ともに過去最高を更新し続けています。Cloudflareが2026年上半期に公開した最新データをもとに、何が起きているのかを整理します。

この記事で分かること

  • DDoS攻撃とは、大量の通信を標的に送りつけてサービスを停止・低下させる攻撃で、2025年12月には過去最大となる31.4Tbpsの攻撃がAisuruボットネットにより発生し、わずか35秒で終了した
  • Cloudflareは2026年上半期だけで1Tbpsを超える攻撃を935件緩和し、Q1からQ2にかけて+519%も急増。同時期の平均は1時間あたり約5,343件、1日あたり約12万8千件のDDoS攻撃を観測している
  • 攻撃の主役は『ボットネットによる力任せの洪水』から『DNSやActive Directoryの仕組みを悪用する反射・増幅攻撃』へシフトしており、DNSフラッドは四半期で25.7%から40.0%に、CLDAPフラッドは+580%増加した
  • 個々の攻撃の96.62%は500Mbps未満、90.60%は10分以内に終わるため人手による対応は間に合わず、常時稼働の自動緩和サービス(CDN/スクラビング)と基本的なレート制限・監視の組み合わせが現実的な対策になる

対象読者:Webサービス運営者・情報システム担当者・経営者など

執筆:ゆるふわセキュリティ編集部 最終更新日:2026年9月4日

DDoS攻撃とは:サービスを「止める」ための攻撃

DDoS攻撃(分散型サービス妨害攻撃)でぃーどすこうげき

多数のコンピュータやIoT機器(ボットネット)から、標的のサーバーやネットワークに大量の通信を同時に送りつけ、正規の利用者がサービスを使えない状態に追い込む攻撃です。情報を盗むことが目的の攻撃とは異なり、「止めること」自体が目的である点が特徴です。単一の発信元から行う「DoS攻撃」に対し、多数の発信元を「分散(Distributed)」させて行うためDDoSと呼ばれます。

Webアプリケーションの脆弱性を突く攻撃が「鍵をこじ開けて中に入る」攻撃だとすれば、DDoS攻撃は「入り口に人を殺到させて誰も入れなくする」攻撃に近いイメージです。侵入や情報窃取を伴わない分、対策の優先度が下がりがちですが、ECサイトの売上機会の喪失やSaaSのSLA違反など、事業への直接的な打撃は決して小さくありません。

過去最大31.4Tbps、されどわずか35秒

DDoS攻撃の規模を表す代表的な指標が、1秒間に送りつけられる通信量を示す「Tbps(テラビット毎秒)」です。2025年12月、IoT機器を乗っ取って構成される「Aisuruボットネット」が、史上最大となる31.4Tbpsの攻撃を記録しました。2025年の1年間だけで、記録は3.8Tbpsから31.4Tbpsへと更新されており、わずか14カ月ほどで規模が8倍以上に拡大したことになります1

⚠️

『大きい攻撃ほど長く続く』わけではない

31.4Tbpsという史上最大の攻撃は、開始から終了までわずか35秒でした。Cloudflareも同様に「記録的な攻撃が35秒で完結した事例を観測した」と報告しており、大規模なDDoS攻撃ほど短時間で終わる傾向があります。攻撃者にとっては、検知や人手による対応が追いつく前に目的(一時的なサービス停止)を達成できれば十分だからです2

Cloudflareが見た2026年上半期:1時間に5,343件

大手CDN事業者Cloudflareは、自社ネットワークで観測したDDoS攻撃の脅威動向を四半期ごとにまとめた「DDoS Threat Report」を公開しています。2026年上半期(1〜6月)版によれば、同社は期間中に2,320万件のネットワーク層DDoS攻撃と、29.64兆件のHTTP DDoSリクエストを緩和しました2

⏱️

約5,343件/時

2026年上半期にCloudflareが緩和したネットワーク層DDoS攻撃の平均頻度(1日約12.8万件)

📈

935件

同期間に緩和した『1Tbps超』の攻撃件数。Q1→Q2で+519%の急増

💾

165PB

攻撃量がピークに達した2026年4月単月の攻撃トラフィック総量

🌐

500Tbps

Cloudflareが世界330都市以上に持つネットワークの総処理容量

「1Tbps超」「1秒あたり10億パケット超(Bpps)」「1秒あたり100万リクエスト超(Mrps)」のいずれかに達する攻撃は「ハイパーボリューメトリック攻撃」と呼ばれ、2026年第2四半期だけで805件観測されました。これは第1四半期の6倍を超える急増です2

💡

ほとんどの攻撃は『小さくて短い』——でも侮れない

Cloudflareの分析では、実際のネットワーク層攻撃の96.62%は500Mbps未満、90.60%は10分以内に終息しています。ただし「小さい」はあくまで相対的な表現で、100Mbpsの攻撃でも無防備なサーバーやWebサイトを落とすには十分、100Gbpsの攻撃なら多くの無防備なデータセンターを機能停止に追い込めるとされています2

攻撃手法の変化:ボットネットの洪水から「反射・増幅」へ

DDoS攻撃の手口は年々変化しています。かつて主流だったのは、乗っ取った大量の機器から直接パケットを送りつける「ボットネットによる洪水」でしたが、2026年上半期は、DNSサーバーなど既存の仕組みを悪用して通信量を何倍にも「増幅」させる反射攻撃が中心になっています。

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ボットネットフラッド(直接型)

  • 乗っ取った大量の機器(ボット)から標的へ直接送信
  • 攻撃規模はボットネットの規模にほぼ比例する
  • 発信元IPを追跡しやすい場合がある
  • IoT機器の脆弱性対策が有効な防御になる
VS
🪞

反射・増幅攻撃(DNS/CLDAP等)

  • 送信元を偽装した小さな問い合わせを公開サーバーに送る
  • サーバーからの応答が数十〜数百倍に『増幅』されて標的に届く
  • 送信元IPが偽装されるため攻撃元の特定が難しい
  • 公開サーバー側の設定不備(オープンリゾルバ等)が悪用される

2026年上半期は、DNSフラッドとDNS増幅を合わせた「DNSベースの攻撃」がネットワーク層攻撃全体の34.3%を占め、なかでもDNSフラッド単体の比率は四半期で25.7%から40.0%へと拡大しました。さらに、Active Directoryのディレクトリサービスを狙う「CLDAPフラッド」は四半期で+580%も急増し、第2四半期には第3位の攻撃手法に躍り出ています2

CLDAPフラッド(反射・増幅攻撃)の仕組み

🎭

送信元を偽装

攻撃者が標的のIPアドレスに偽装した問い合わせを送信

📡

公開サーバーへ送信

外部から到達可能なActive DirectoryのLDAPサーバー(UDPポート389)に問い合わせが届く

📦

応答が増幅される

サーバーが問い合わせの数十〜数百倍のサイズで応答を返す

🌊

標的に届く

偽装された送信元=標的に、増幅済みの大量データが押し寄せる

誰が狙われ、誰が攻撃しているのか

Cloudflareのレポートは、攻撃の背景に地政学的な出来事があることも示しています。2026年2月28日、イスラエルと米国がイランに対する軍事作戦「Operation Epic Fury」を開始すると、72時間以内に16カ国・110組織に対する149件のハクティビストによるDDoS攻撃の主張が確認され、標的組織の47.8%が政府機関に集中しました。この影響で政府セクターへの攻撃シェアは第1四半期の29位から第2四半期には9位まで急上昇しています2

📰

14.2%

最も攻撃されたメディア・出版業界のHTTP DDoS攻撃シェア(2位の約4倍)

🎯

22.4%

最も攻撃された国・地域となった中国のQ2シェア(2位の米国は18.8%)

🇧🇷

14.9%

攻撃元シェアで米国を上回り首位となったブラジルのH1シェア(Q2は21.4%)

トルコはNATOアンカラ首脳会議(2026年6月〜7月)を前後して攻撃シェアが倍増し、最も攻撃された国の3位に浮上しました。世界各地の紛争・政治イベントが、そのままDDoS攻撃の標的分布を動かしていることがうかがえます2

🌱

法執行機関の対抗策:Operation PowerOFF

2026年4月の攻撃量ピーク以降、観測件数がやや落ち着いた背景には、21カ国が連携した国際的な取り締まり「Operation PowerOFF」があるとみられています。DDoS攻撃を代行業者として請け負う『DDoS-for-Hire』サービスの利用者7万5千人超を対象に、53のドメインを閉鎖、25件の捜索令状を執行し、4人を逮捕しました2。攻撃側にもコストとリスクを課す取り組みが、実際の観測データに表れた例といえます。

個人・企業がとれる現実的な対策

DDoS攻撃、特にハイパーボリューメトリック攻撃を自社のサーバーだけで受け止めるのは、大企業であってもほぼ不可能です。多くの攻撃が10分以内に終わることを踏まえると、「検知してから人手で対応する」体制では原理的に間に合いません。

現実的な対策の組み合わせ

🛡️

CDN/DDoS緩和サービスの利用

Cloudflareのような事業者の分散ネットワークで攻撃トラフィックを吸収・遮断する(自動・常時稼働が前提)

🚦

アプリケーション層のレート制限

ログインやAPIエンドポイントへの過剰なリクエストを制限し、小規模な攻撃や乱用を自前でも緩和する

🧱

ネットワーク機器・IoTの設定見直し

オープンリゾルバや不要な公開UDPサービスを塞ぎ、自社が『反射の踏み台』にされるリスクを減らす

📋

インシデント対応計画への組み込み

DDoS発生時の役割分担や広報対応をあらかじめ手順化しておく

アプリケーション層でのレート制限は、DDoS攻撃そのものを止めるものではありませんが、APIの乱用や総当たり攻撃と合わせて防御の一層として機能します。具体的な実装方法はレート制限をPythonで実装するの記事で扱っています。また、攻撃発生時の組織的な対応体制についてはインシデント対応SOC(セキュリティオペレーションセンター)の記事、クラウド利用時の基本的な防御はクラウドセキュリティの基本の記事もあわせてご覧ください。

まとめ

  • DDoS攻撃は大量の通信で標的のサービスを止める攻撃で、2025年12月には史上最大の31.4Tbps攻撃が発生したが、わずか35秒で終了した
  • Cloudflareは2026年上半期に1Tbps超の攻撃を935件緩和し、Q1からQ2で+519%急増。1時間あたり平均5,343件のDDoS攻撃を観測している
  • 攻撃手法はボットネットによる直接的な洪水から、DNSフラッド(34.3%)やCLDAPフラッド(+580%)のような反射・増幅攻撃へシフトしている
  • 攻撃は地政学的な出来事と連動しており、Operation Epic Furyの際は72時間で16カ国110組織が標的になった一方、国際的な取り締まりOperation PowerOFFのような対抗策も進んでいる
  • 攻撃の9割以上が10分以内に終わるため、常時稼働の自動緩和サービスと、レート制限・インシデント対応計画を組み合わせた備えが現実的な対策になる

もう少し詳しく(背景)

DDoS攻撃対策が難しいのは、防御側が「平常時のコスト」と「攻撃時の耐性」のトレードオフを常に抱えている点にあります。ハイパーボリューメトリック攻撃に耐えられるだけの帯域やサーバーを自社だけで常時確保しておくのは、コスト的にほぼ現実的ではありません。Cloudflareのような事業者が「無料・無制限のDDoS防御」を掲げられるのは、多数の顧客の攻撃トラフィックを1つの巨大な分散ネットワーク(500Tbps規模)で受け止めることで、個々の企業が単独で持つには非現実的な余剰キャパシティを、共同利用の形で提供できるからです。

もう一つの構造的な問題が、反射・増幅攻撃の「踏み台」にされる側の無自覚さです。CLDAPフラッドやDNS増幅は、攻撃者自身のインフラを直接使うのではなく、世界中に存在する設定不備のあるサーバー(オープンリゾルバや、外部から到達可能なActive Directoryサーバーなど)を無断で「増幅器」として利用します。自社のサーバーが攻撃を受けていなくても、知らないうちに他社への攻撃に加担してしまうリスクがあるということです。IoT機器やネットワーク機器の初期設定を見直し、不要な公開サービスを塞ぐという地味な作業が、巡り巡って社会全体のDDoS耐性を左右しています。

参考資料・出典

ゆるふわポータルでは、一次情報・公的資料にもとづき、専門用語をできるだけやさしく翻訳することを心がけています。内容に誤りや古い情報がある場合は、お問い合わせからご連絡ください。

執筆:ゆるふわセキュリティ編集部 最終更新日:2026年9月4日

Footnotes

  1. Stingrai「DDoS Statistics 2026: The 31.4 Tbps Record and Aisuru Botnet」による。2025年12月、IoTボットネット「Aisuru」により史上最大となる31.4TbpsのDDoS攻撃が観測され、わずか35秒で終了したと報告されている。同年の記録は3.8Tbpsから31.4Tbpsへと約14カ月で更新された。

  2. Cloudflare「DDoS Threat Report H1 2026」(2026年8月11日公開)による。2026年上半期に2,320万件のネットワーク層DDoS攻撃・29.64兆件のHTTP DDoSリクエストを緩和し、1Tbps超の攻撃935件(Q1→Q2で+519%)、ハイパーボリューメトリック攻撃(Q2に805件、前四半期比6倍超)を観測。ネットワーク層攻撃の96.62%が500Mbps未満、90.60%が10分未満で終息。DNSベースの攻撃が34.3%(DNSフラッドは25.7%→40.0%に拡大)、CLDAPフラッドが+580%で第3位の攻撃手法に。Operation Epic Fury関連で16カ国110組織に149件のハクティビスト攻撃、政府セクターの攻撃シェアが29位→9位に上昇。中国が最も攻撃された国・地域(Q2シェア22.4%)、ブラジルが攻撃元シェア首位(H1で14.9%、Q2で21.4%)。Operation PowerOFFは21カ国が連携し、DDoS代行サービス利用者7.5万人超を対象に53ドメイン閉鎖、捜索令状25件、逮捕4人。 2 3 4 5 6 7 8

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