
耐量子暗号(PQC)|量子時代に暗号を守る移行が始まった
2026-08-10 ・ ビジネス
将来の量子コンピュータは、いまの暗号を破る力を持つと考えられています。その備えが耐量子暗号(PQC)。すでに移行が始まっています。
なぜ今の暗号が危ないのか
現在のHTTPSやパスキーは、公開鍵暗号(RSAや楕円曲線)に支えられています。これらは「大きな数の分解が難しい」ことが安全の根拠。ところが量子コンピュータのショアのアルゴリズムは、これを高速に解いてしまう可能性があります。
Harvest Now, Decrypt Later
「今のうちに暗号化データを盗んでおき、量子計算機が実用化したら後で解読する」——この"収穫先取り"の脅威があるため、まだ量子計算機が無くても今から備える必要があります。
NISTが新標準を制定
米国の標準化機関NISTが、量子でも破れない新しい暗号を標準化しました。
ML-KEM
鍵交換(FIPS 203)
ML-DSA
デジタル署名(FIPS 204)
SLH-DSA
ハッシュ署名の予備(FIPS 205)
移行スケジュール
米政府機関は2027年から耐量子暗号の調達を開始し、2033年までに全面移行を求めています。企業も、長期間秘密にすべきデータを扱うほど、早めの移行検討が必要です。
つながる分野
「暗号を破る側」の量子コンピュータと「守る側」の耐量子暗号は表裏一体。くわしくは姉妹サイトゆるふわ量子コンピュータもどうぞ。
もう少し詳しく(市場と背景)
耐量子暗号(PQC)が経営課題になるのは、「今は安全でも将来破られる」からです。強力な量子コンピュータが実用化すれば、いまHTTPSや署名を支えるRSAや楕円曲線暗号は理論上破られます。まだその計算機は存在しませんが、問題は「今のうちに暗号文を盗んで保存し、将来解読する」("Harvest Now, Decrypt Later")という攻撃——長期間秘密を保つべきデータ(医療・国家機密・知財)は、今すでにリスクにさらされています1。この動きは実務段階に入っており、米NISTは2024年に耐量子暗号の標準を正式に公開し、各国政府が移行スケジュールを示し始めました2。企業に求められるのは、まず「どこでどの暗号を使っているか」の棚卸し(暗号アジリティ)。将来アルゴリズムを差し替えられる設計にしておくことが、移行コストを大きく左右します。